1976 年 29 巻 3 号 p. 190-194,257
潰瘍性大腸炎は慢性の経過をとるび漫性の炎症性疾患であるが,本症が定型的な病像・経過をとる場合にはその診断は比較的容易であるが,非定型的な場合にはその診断は難しいことも多い。殊にright sided colitisやsegmental colitisの病型を呈する場合には,本症とCrohn病,結核等との異同が問踵になる。
20歳・女性にみられた全大腸及び回腸終末部に及ぶ定型的な本症の経過観察中,直腸から下行結腸にかけては正常粘膜様にまで回復がみられたのに対し,深部大腸には炎症所見が残り,一見right sided colitis型の罹患範囲を呈する様になった。これは本症にもright sided型の病型を呈する場合があることを示しており興味深い。同時に正常粘膜様所見を呈した直腸に,色素撒布を行うことによって,異常小区像を識別しえたが,本法は殊に本症の緩解期(静止期)の診断に有用な補助的診断法であることが強調できる。