1978 年 31 巻 5 号 p. 450-467,522
大腸癌29例(直腸癌15例,結腸癌14例)を中心に大腸正常上皮4例,大腸腺腫9例,胃癌11例の病理組織像と細胞核DNA量の関連を検討した結果,癌腫の核DNA量は非癌組織と比べ増加することを認めた.更に癌腫の組織型,分化度,異型度,浸潤増殖像及び発生部位等の相違による核DNA量の差を認めた.即ち非粘液腺癌で異型及び浸潤増殖の比較的高度な中及至低分化腺癌は,粘液癌や異型及び浸潤増殖の軽度な高分化腺癌と比べ,高い核DNA量値を示した.直腸癌と結腸癌の核DNA量には明らかな差は認めなかったが,大腸癌は胃癌に比べ低い核DNA量値を示した.これらは病理組織学的検索で大腸癌は胃癌と比べ異型の軽度な比較的良く分化した腺癌であったことと合致する結果であった.大腸腺腫の核DNA量は大腸正常上皮と大腸癌の中間値で,4cを越える核DNA量を有する細胞の出現率が,癌境界病変の判定に大きな意味をもつことが認められた.