術後機能障害を最小限にとどめた直腸癌手術術式の開発に資する基礎的研究として,実習死体において陰部神経叢と骨盤神経叢の構成と分布形態の精査を試みた.
陰部神経叢の枝は,起始位置から内側群(第1群)と外側群(第2群)とに分けられ,両群ともに所属神経の問に層的構成が認められる.骨盤内臓神経は内側群の最腹側に位置する神経である.
外肛門括約筋の主要支配神経は下直腸神経と会陰神経であり,後端部にのみ第4仙骨神経会陰枝または肛門尾骨神経が進入する.
肛門挙筋の主要支配枝は肛門挙筋神経であるが,筋下端部は会陰神経と下直腸神経の支配を受ける.
骨盤神経叢は主として下腹神経と骨盤内臓神経から構成され,仙骨内臓神経の関与度は低い.骨盤神経叢から出る直腸枝は,直腸壁への進入個所により,上群と下群とに分離する傾向が認められる.