1986 年 39 巻 4 号 p. 397-402
大腸脂肪腫は,比較的稀な疾患であり,また小腸腺筋腫は極めて稀な疾患である.最近筆者らは空腸腺筋腫を合併した横行結腸脂肪腫の1例を経験した.症例は66歳の男性,主訴は水様便,精査の結果横行結腸癌を疑い右半結腸切除術を施行,術後イレウスとなり第13病日癒着剥離術を施行し術中空腸に腫瘤を触知したため,小腸部分切除も同時に施行した.術後経過は良好である.横行結腸,空腸の腫瘤は共に粘膜下腫瘍であり,結腸は脂肪腫,空腸は腺筋腫であった.本邦報告例を集計すると自験例を含め大腸脂肪腫は136例であり,小腸腺筋腫は14例のみである,大腸脂肪腫は平均年齢55.1歳,発生部位は盲腸,横行結腸に多く術前脂肪腫と診断された症例は10%以下であり75%以上の症例で腸切除がなされている.小腸腺筋腫は10歳以下に多く,術前診断された症例はない.自験例のごとく,小腸腺筋腫を合併した大腸脂肪腫は調べ得た限りでは本症例が本邦第1例目と思われる.