1989 年 42 巻 1 号 p. 1-9
従来の開放式結紮切除術はそれ以前の Whitehead 術式に比べると, 肛門上皮を温存するという点では優れた術式であるが, 痔核を完全に取ると肛門上皮の残存が少なくなり, 温存させると痔核組織が残るという欠点があった.私はこの欠点を改善するために「可及的肛門上皮温存術式」を発表してきたが, この術式にも1つの欠点があることに気付いた.それは肛門上皮下の軟部組織を痔核組織とともに切除してしまうことで, そのため術後肛門部に軟らかみが失われ, 多少閉鎖不全などをきたす症例の発生をみていた.私はThomson のいわゆる cushion すなわち痔核を取り囲む軟部結合組織を極力温存することによって, この欠点を改めることができると考え, 「肛門上皮・ Cushion 温存術式」を考案し, 50症例に応用した.その結果, 痔核の根治に加え, 機能および形態保全という点で, 従来の術式よりさらに優れた成績を得るようになったので報告する.