1989 年 42 巻 6 号 p. 1051-1057
近年, 増加傾向にある大腸癌に対し, 便潜血反応をスクリーニングに用いた集団検診がさかんに行われるようになった.とくに最近では免疫学的便潜血試験の開発の進歩が目覚しく, 待望された大腸集検への実際応用の段階に入った.今回われわれは, RPHA法を集検に応用するに際し, 費用と労力の面からRPHA3回混和B法を考案し, 5,897名に対し集検を行った.またRPHA 3回混和B法陽性例には同一検体抽出液を用いて再検を行い, 混和法の精度を検討した.RPHA 3回混和B法による要精検率は3.2% (186名) と低率となった.その精検受診者103名 (55.4%) の中から10名の大腸癌が発見され, 9.7%の高い陽性反応適中度が示された.発見癌のうちDukes Cの進行癌は1名で, 早期癌が6名を占めていたが, 再検法によるその潜血の内訳をみると, 3日とも陽性であった症例は5例 (50%) のみであり, 免疫学的便潜血試験を用いても複数回の繰り返し検査の必要性が示唆された.