1990 年 43 巻 1 号 p. 50-55
過去12年間に当科で手術した大腸癌272例のうち, 75歳以上の高齢者大腸癌47例の臨床病理学的特徴について75歳以下 (対照群) と比較検討し, 以下の結論を得た. (1) 最近6年間の高齢者大腸癌の手術率は22.8%と, それ以前の11.0%よりも上昇した (p<0.05). (2) 高齢者大腸癌に特徴的な臨床症状や病悩期間はなかった.病理学的検討では, 高齢者では上行結腸癌が対照群よりも高率であったが (P>0.05), 肉眼型, 腫瘍径, 組織型, 壁深達度, Dukes 分類, リンパ転移率, 脈管浸襲率には対照群と差がなかった. (3) 切除率, 治癒切除率は両群間で差はなかったが, 高齢者の直死率は14.9%と対照群の4.0%より高率であった (P<0.01). (4) 高齢者では対照群よりも術前の有併存疾患率78.3% (P<0.01), 術後合併症の発生率46.7% (P<0.05) ともに高率で, これらが直死率の上昇に大きく関与したと考えられた.