1990 年 43 巻 2 号 p. 144-152
各種抗CEA抗体を用いて, 大腸癌原発巣と転移巣におけるCEAの局在を免疫組織学的に検討し, 原発巣と転移巣の間の異同について検討した.対象および方法 : 33例の大腸癌, 9例のリンパ節転移巣, 17例の肝転移巣についてポリクローナル抗体と7種のモノクローナル抗体を用いて, PAP法組織染色を行った.
結果 : 1) ポリクローナル抗体では全例陽性で, 大腸癌の陽性部位は組織型により一定であった.リンパ節転移巣は全例原発巣と同じ部位が陽性となったが肝転移巣は原発巣と異なる部位が陽性となったものがあった.2) モノクローナル抗体での陽性部位は, いずれもポリクローナル抗体と同じであった.3) 2種のモノクローナル抗体1A4, 4H11では染色されないものがあり, 原発巣と肝転移巣で陰性, 陽性が異なるものがあった.以上よりリンパ節転移巣は原発巣と違いがないが, 肝転移巣のなかには, 原発巣と異なる性質を有するものもあることが確認された.