1990 年 43 巻 3 号 p. 354-360
開腹手術を施行した転移性大腸癌の臨床病理学的所見につき検当した.対象は1978年から1987年の間に転移性大腸癌と診断され, 開腹手術を施行した18例であり, 原発臓器の内訳は胃12例, 結腸2例, 食道, 喉頭, 卵巣, 子宮各1例ずつであった.組織型は3例が扁平上皮癌で残りの15例は全て腺癌であった.原発巣手術後, 転移巣による症状発現までの期間は1年から最長8年10か月に及んだ.転移巣の症状は下血2例, そのほかは腹痛・腹満感・排便困難などの狭窄症状を示した.注腸検査は15例, 内視鏡検査は7例に施行し, このうち5例に生検が行われ, 2例のみが組織学的に転移性大腸癌の診断に至った.転移巣切除例は9例で, このう限局性発育は3例で, 他の6例は少なくとも一部が浸潤性であった.予後は5生率6%と非常に悪いが, 転移巣切除9例中3例が2年以上生存しており, 転移巣を早期に発見し可能なかぎり切除することが重要と思われた.