1990 年 43 巻 3 号 p. 467-472
腸結核症は, 抗結核剤の出現により肺結核症と共に著しく減少している.われわれは, 術前検査で腸結核を強く疑い, 摘出標本の病理学的検索により, 大腸結核症と確診し得た1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する.患者は40歳女性で腹痛, 腹部膨満感および血便を主訴として入院.大腸X線, 大腸内視鏡, 血管造影, 腹部CTなどの諸検査を施行し, 大腸結核症を疑ったが確診には至らなかった.狭窄による通過障害および出血をきたしていたので, 手術の適応と考え右結腸切除術を施行した.切除標本の病理学的検索により, 大腸結核症と診断された.術後は順調に経過し, 第13病日より抗結核剤を投与し, 現在外来にて経過観察中である.