日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
Print ISSN : 0047-1801
ISSN-L : 0047-1801
大腸内視鏡における前投薬の直腸内投与に関する研究
伊部 晃裕
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 44 巻 3 号 p. 271-278

詳細
抄録

大腸内視鏡における被検者の苦痛を始めとする負担を軽減する目的で前投薬の直腸内投与を検討した。対象は1988年4,月から1990年8月までに当院にて施行した大腸内視鏡のうち,研究内容を説明後,自由意志による協力の得られた被検者で検査直前にフルニトラゼパム1mgを投与した83例,1.5mgを投与した80例,塩酸ブプレノルフィン0.2mgを投与した86例,0.4mgを投与した81例,およびフルニトラゼパム1mgと塩酸ブプレノルフィン0.2mgを併用投与した79例の内視鏡A群と,検査5分前に投与したそれぞれ53例,49例,51例,55例,47例の内視鏡B群と前投薬を投与しなかった89例である。なお,内視鏡A群の両薬剤の各投与量および併用投与のうち,それぞれ10例の平均血中濃度も測定した。その結果,前投薬の直腸内投与は投与しない場合と比較して,有意に苦痛を訴える率は低く,有用な方法と考えられた。しかもそれらは静脈内投与と近似した効果を示した。苦痛を訴えない率はフルニトラゼパム1.5mg投与が一番高かったが,内視鏡終了後の愁訴が多く,それらが消失し歩行帰宅までに30分以上臥床安静を必要とする率も最も高かった。併用投与,男女別,投与時間別,高齢者・若年者別では苦痛を訴える率に明らかな相違は認めなかった。前投薬の直腸内投与としてはフルニトラゼパム1mg投与が最も有用と思われた。

著者関連情報
© 日本大腸肛門病学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
次の記事
feedback
Top