日本大腸肛門病学会雑誌
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痔瘻から発生したガス産生性壊疽性筋膜炎(Fournier's Gangrene)の1例
若杉 純一金 正文簾田 康一郎杉山 貢
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1992 年 45 巻 4 号 p. 480-484

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抄録

症例は53歳の男性で,陰嚢の発赤腫張を主訴に来院した.腹部単純X線検査で陰嚢および骨盤内に散在する小ガス像を,CT検査で陰嚢から仙骨前面,膵後面まで広がる異常ガス像を認めた.直腸診で肛門管後壁に痔瘻の1次口を認め,注腸造影検査で1次口から仙骨前面に造影剤が逸脱し,痔瘻より発生した壊疽性筋膜炎と診断,ドレナージ術および人工肛門造設術を施行した.細菌培養検査の結果,好気性菌のE. coli,pseudomonas aeruginosaと嫌気性菌のbacteroides fragilisによる混合感染であった.肛門疾患から発生したガス壊疽の本邦報告例は自験例も含め29例で,糖尿病を合併しているものが多かった.抗生物質の発達した近年,壊疽性筋膜炎は比較的まれ疾な患であるが,痔瘻や肛門周囲膿瘍などの肛門疾患で,糖尿病などの基礎疾患がある場合は,広範な壊疽性筋膜炎に進展することもあるので,十分な経過観察が必要であると考えられた.

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