日本大腸肛門病学会雑誌
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肛門内圧からみた痔瘻術式の検討
辻 順行高野 正博藤好 建史河野 通孝
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1993 年 46 巻 3 号 p. 245-252

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抄録

1991年3月より1992年5月までに高野病院にて手術を施行し,術前,術後1カ月,3カ月,6カ月に肛門内圧を測定した後方筋間痔瘻開放術の16症例,側方筋間痔瘻開放術の5症例,筋間痔瘻に対して括約筋温存術を行った16症例,坐骨直腸窩痔瘻に対して括約筋温存術を行った16症例の計53症例を対象として検討を加え,以下の結果を得た.(1)肛門の静止圧,陣意圧ともに,術直後は術式に関係なく低下するが,その後は側方筋間痔瘻開放術を除いてほぼ満足すべき回復を示した.しかし,それ以上の回復は静止圧と随意圧では異なり,術後6カ月における随意圧は側方の筋間痔瘻開放術症例を除くほとんどの症例がほぼ100%近く術前の値に回復しているのに対し,静止圧はある程度までは回復するが,それ以上は進まず,ほとんどの症例が手術により術前の静止圧より低下した.(2)開放術が標準術式とされている肛門後方の筋問痔瘻においても術前,肛門の収縮が悪い症例は術後括約不全となる可能性があり,括約筋温存術を施行した方が安全であるとと思われた.(3)側方筋間痔瘻開放術は,術後回復の度合が少なく回避すべきであると思われた.(4)坐骨直腸窩膿瘍症例を二期的に手術する場合には,切開排膿後早期に括約筋温存術を施行した方が炎症の影響による括約筋の硬化が少なく,術後括約不全に結びつく可能性が低いと思われた.(5)括約筋温存術における原発口より発巣発までのくり抜きは,極力最小限の傷で施行すべきであると思われた.

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