1994 年 47 巻 9 号 p. 1013-1020
大腸癌切除例40例の新鮮凍結連続切片を用いAgNOR dot数,DNAポリメラーゼα陽性細胞率(positive rate:PR)を算出した,これらと臨床病理学的事項との関連性,およびAgNORとDNAポリメラーゼαとの相関性を解析した.臨床病理学的事項との関連では,AgNOR数は肝転移陽性例は陰性例に対して,リンパ節転移陽性例は陰性例に対して有意に高値を示した(p<0.05).Dukes'stageに関しても有意の関連を認めた(p<0.05).DNAポリメラーゼα PRでは臨床病理学的事項との間に有意の関連を認めなかった.またAgNORとDNAポリメラーゼαの間に相関性をみなかった.以上より,AgNORは細胞増殖に直接関与する因子ではなくDNAポリメラーゼαとは独立した因子であることが示唆された.また肝転移,リンパ節転移を予測する指標となり得ることが示された.