抄録
1982年から1993年までの12年間に経験した大腸進行癌344例のうち39歳以下の若年者大腸癌17例について75歳以上の高齢者69例と臨床病理学的所見,手術成績について比較・検討した.若年者大腸癌症例は,大腸癌手術症例の約4.9%を占め,高齢者群と比較して相対的に女性に多い傾向が認められた.癌家族歴,大腸癌家族歴陽性率は有意に高かった.癌の占拠部位は左側結腸に比較的多く,肉眼型は侵潤型が多かった.組織学的には中分化腺癌が多く,S(a2)以上の深部侵潤例,静脈侵襲陽性例が有意に多かった.若年者大腸癌手術例の5年生存率は60.6%,治癒切除例では71.4%で,高齢者群と比較して相対的に治癒切除例では5年生存率が良好である傾向が認められた.それ故,若年者大腸癌に対しては,早期診断,手術が5年生存率向上につながると考えられた.また他臓器重複癌の検索,家族内発生の可能性なども考慮する必要があると考えられた.