1997 年 50 巻 10 号 p. 1096-1102
裂肛の治療法には保存的療法,外来処置,手術療法があるが,狭窄を伴った慢性裂肛は手術療法の適応となる.手術療法も種々の術式が考案されているが,高度の全周性瘢痕狭窄をきたしている例にはsliding skin graft(SSG)が適応となり,わが国では現在広く普及している.しかし,原理的には非常に優れた本術式も,真横にできる粘膜皮膚縫合部の瘢痕や炎症を生じることから術後の愁訴を残すなどの欠点が報告されている,われわれも狭窄型の慢性裂肛に対してこのSSGを行ってきたが,症例を重ねると少数例ではあるが術後に痛みやしこり,違和感といった愁訴を残す例を経験している.今回この愁訴の原因となる本術式の欠点や手技上の注意点を検討した.また1989年高野はSSGの欠点を補う術式として歯状線形成SSGを考案し発表したが,われわれも少数例ではあるが本術式を試み,良好な結果を得た.