日本大腸肛門病学会雑誌
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直腸早期癌に対する局所切除時の術中前処置の必要性に関する検討
前田 耕太郎丸田 守人内海 俊明遠山 邦宏佐藤 美信奥村 嘉浩橋本 光正細田 洋一郎掘部 良宗黒田 誠
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1997 年 50 巻 5 号 p. 307-310

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抄録

直腸早期癌の局所切除時におけるimplantation metastasisの可能性を明らかにするために,直腸早期癌における腸管内の癌細胞について検索し,術中の特別な前処置の必要性の有無を検討した.対象は,経肛門的局所切除術を施行した直腸早期癌12例とS状結腸癌1例の計13例である.方法は,経肛門的に視野を展開後,腫瘍と腫瘍の左右および肛門側の直腸粘膜より,綿棒を用いて細胞を採取し細胞診にて癌細胞の有無を検討した.腫瘍切除後には,腫瘍の擦過細胞診も行った.腫瘍周囲の直腸粘膜の細胞診では,39か所中1か所(2.6%),腫瘍細胞診では,13例中9例(69.2%),腫瘍擦過細胞診では,11例中10例(90.9%)で癌細胞が検出された.以上より,局所切除術の際には,手術操作の加わらない自然な状態では直腸周囲粘膜への癌の落下の可能性は少なく,直腸洗浄などの前処置の必要はないと考えられた.

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