1997 年 50 巻 8 号 p. 572-583
直腸癌術後の頻便を中心とする便通異常の病態把握のために,従来より行われているマノメトリー検査に加え,大腸シンチグラム検査を用い大腸の輸送能の評価を行った.直腸癌根治術後患者24名および健常者12名を対象とした,大腸内視鏡検査を利用して盲腸にポリエチレンチューブを挿入し,盲腸内にRI溶液を注入する.RI溶液の移動をdynamic scanにて観察し,輸送時間を測定した.また排便後の排便率も算出した.術後患者24名は排便回数の面から良好群,不良群の2群に分類可能で良好群は術後の経過が有意に長かった.横行結腸、下行結腸直腸・S状結腸領域の通過時間は,いずれも良好群で有意に長く,横行結腸では,健常群よりも長かった.また直腸の排便率も良好群で有意に大きかった.術後早期には横行結腸以遠の輸送時間の短縮と直腸領域の排便率の低下が頻便の原因で,術後の時間経過にてそれらが改善されるものと考えられる.