1997 年 50 巻 8 号 p. 594-598
症例は31歳,男性.26歳頃より下血腹痛の既往があり,今回,下腹部激痛出現し入院となる.入院時,左下腹部の軽い圧痛のみで,眼,口,皮膚,外陰肛門部に病変はみられず,ツ反は陰性,便培養では常在菌のみで,便,胃液培養でも結核菌は陰性であった.注腸造影,大腸内視鏡検査でS状結腸に狭窄がみられたが,上部消化管検査および小腸造影では異常所見は認められなかった.イレウス症状の進行もあり診断および治療を目的としS状結腸切除術を施行した.切除材料では,4cm長の限局性の狭窄,多発する炎症性ポリープがみられたが縦走潰瘍は認めなかった.組織学的には粘膜上皮の再生,過性成性変化,深在性嚢胞性大腸炎類似の粘膜下層の嚢胞状拡張腺管の存在,粘膜下層主体の壁全層性の炎症所見,粘膜下層の高度の線維化が特徴で,肉芽腫はみられず,抗酸菌染色も陰性であった.以上,既知の疾患に該当しない特殊な大腸炎で,狭窄を伴った分類不能型大腸炎と診断した.