日本大腸肛門病学会雑誌
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遺伝性大腸癌
馬塲 正三
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1997 年 50 巻 9 号 p. 701-702

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抄録

(I)はじめに
消化器癌発癌に関与する遺伝子が数多く遺伝性大腸癌の研究からクローニングされ、大腸癌発癌のメカニズムが次第に明らかにされつつある。この意味で遺伝性大腸癌は腫瘍発生学上、ますます重要な疾患となった。また、原因遺伝子の面から遺伝性大腸癌を改めて見直す必要性も生じてきた。
最近のこの方面の研究の進歩は著しいものがある。浜松医大の症例を中心に、大腸癌研究会における遺伝性大腸癌集積症例の解析、更にICG-HNPCC会議、LeedsCastle Pdyposis Group Studyなどの会議に於ける最近の情報も含め報告する。
(II)関連遺伝子の発見
遺伝性の癌ハイリスクの疾患として六腸ポリポーシスと呼ばれる疾患群がある。
この疾患群は大腸のみならず消化管や全身に種々の病変が発生しやすい事が知られている。
大腸ポリポーシスは腺腫性疾患と過誤腫性疾患に大別される。
過誤腫性疾患のPeutz-Jeghers症候群の原因遺伝子はなおクローニングされていないが、第19番染色体短腕上にその局在があることが証明された。
Cowden病(Multiple Hamartoma Symdrome)の原因遺伝子(P-TEN遺伝子)がクローニングされ、tissue mixtureに関与する遺伝子であることが明らかになった。
腺腫性大腸ポリポーシスとしては家族性大腸腺腫症(FAP)、Gardner症候群:非定型的FAP(AAPC)が挙げられるが、APC遺伝子がクローニングされたことにより同一疾患と認識されるに到った。
FAPの従来の診断基準であった100ケ以上のポリープという基準を満たさない家系があることが明らかにされた。即ち、ポリープの数が少ないAAPCもFAPと同一の範疇の疾患であり、APC遺伝子の変異部位によりこの様な亜型が発生することが判明した。従って同じ様な臨床像を呈するHNPCC症例との鑑別には遺伝子解析が重要な鍵となった。
また、FAPに脳腫瘍を合併するTurcot症候群は遺伝子的にheterogenousな疾患でありAPC遺伝子に起因するものはmedulloblastomaを発症し、HNPCCの原因遺伝子の一つであるhMSH-2に起因するものはglioblastomaを発症することがHamiltonらにより明らかにされた。またMuirtorre SymdromeはHNPCCの亜型と分類されるに到った。
以下最も重要な疾患であるFAP、 HNPCCについて臨床上の問題点について遺伝子の面から考察する。

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