2001 年 54 巻 3 号 p. 156-160
直腸脱は重篤な疾患ではない.従ってわが国ではこの疾患に簡単で安全な経肛門的手術が多く行われているが,その治癒率は欧米に比しやや劣る.患者は1977年よりゆるんだ直腸を吸収糸で筋層まで縫縮した後,Thiersch法を加えるが,人工糸の代りに患者自身の大腿外側中央部の広筋膜大きさ3cm×14cmを用いて肛門輪を7号ブジー位の太さに縫縮する手術に変更した.この術式は広筋膜の自家移植であり,この部分の広筋膜は80歳の老人でも強靭で,術後の感染を防止出来れば新陳代謝しながら生存して長期治癒をもたらすと考えられ,安全で危険な合併症はおきていない.
1977年より1999年までの23年間にこの術式で手術した患者82例中,消息を追求出来た70例のうち再発は6例で,再発率は8.6%と低く,GANT-三輪-Thiersch法で人工糸の代りに自家広筋膜紐を移植する術式は極めて有用な手術法であると考える.