日本大腸肛門病学会雑誌
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術前診断が可能であった魚骨による肛門周囲膿瘍の1例
術前診断の意義と本邦報告例の検討
蛭川 浩史遠藤 和彦
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2003 年 56 巻 2 号 p. 69-73

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抄録

超音波検査により術前診断しえた魚骨による肛門周囲膿瘍の1例を経験した.症例は65歳,男性.肛門痛を主訴に来院した.来院時の直腸指診で5時の部位の肛門周囲に有痛性の硬結を触知した.問診にて総義歯で大酒家で魚類を好み,内痔核手術と広範囲胃切除術の既往があったため,魚骨による肛門穿通を疑い,超音波検査を施行したところ,膿瘍内に高輝度線状陰影を認めた.魚骨による肛門周囲膿瘍の診断で切開排膿術,魚骨摘出術を施行し軽快退院した.本邦報告例では魚骨が原因となった直腸・肛門の穿孔・穿通症例の報告は過去13例あり,ほとんどの症例が直腸や肛門周囲の膿瘍を来していたが,肛門周囲膿瘍症例で術前に魚骨が原因であると画像診断された症例はなかった.誤嚥された魚骨による肛門周囲膿瘍は比較的稀な疾患であるが,とくに魚骨による腸管穿孔を来す可能性の高い症例では,同疾患を常に念頭に置き積極的に鑑別する必要がある.

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