2003 年 56 巻 4 号 p. 156-160
今回我々は早期胃癌を伴った横行結腸癌術後孤立性脾臓転移の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は59歳女性,横行結腸癌イレウスにて平成10年12月手術を施行した.術後9カ月目に腫瘍マーカーの上昇を認め腹部CT検査にて脾腫瘍を指摘された.スクリーニングで行った胃内視鏡検査では幽門部にIIa+IIc病変を指摘された.横行結腸癌術後孤立性脾臓転移と早期胃癌の合併症例と診断,脾臓摘出術,胃全摘術を施行した.術後病理組織学的検査では脾腫瘍は中分化腺癌の組織像で,横行結腸癌からの転移と診断した.患者は術後18カ月経過した時点で無再発生存中である.大腸癌異時性孤立性脾臓転移は稀で,本邦報告例は自験例を含め26例にすぎなかった.文献的考察も含め,大腸癌孤立性脾臓転移には外科的切除を含めた積極的な集学的治療が長期生存に重要であると考えられた.