抄録
症例1は80歳,男性.労作時胸痛を主訴に冠動脈造影(CAG)を施行したところ,3枝病変を認めたため,冠動脈バイパス術を施行(左右内胸動脈をそれぞれ左前下行枝,左回旋枝に吻合し,胃大網動脈を右冠動脈に吻合).その後,労作時胸痛再発.CAGでは左右内胸動脈グラフトはともに閉塞.術後3年での内胸動脈グラフト閉塞であった.症例2は73歳,女性.労作時胸痛を主訴に左主幹部から左下前行枝にかけての高度狭窄病変に対しステント留置術を施行.その後,不安定狭心症を発症.CAGでは同ステント内に高度の再狭窄を認めた.そのため,冠動脈バイパス術を施行(左内胸動脈グラフトを左前下行枝に吻合し,伏在静脈グラフトを左回旋枝に吻合).その後,労作時胸痛あり再びCAGを施行したところ,左内胸動脈グラフトが閉塞.術後1年半での内胸動脈グラフト閉塞であった.症例1および2はそれぞれ異なる機序で早期の内胸動脈グラフト閉塞を来したと考えられた.