抄録
症例は70 歳男性.労作時胸部圧迫感を主訴に受診し,マスターダブル負荷検査陽性で,労作性狭心症の疑いで冠動脈造影検査を施行した.左前下行枝Seg.7 に90%狭窄病変を認めたため,経皮的冠動脈形成術を行った.バイオリムスA9 溶出性ステントを留置し,治療後狭心症は消失し翌日退院となった.しかし治療後からこれまでとは違い安静時に胸痛を自覚するようになった.退院翌日,散歩中に胸部圧迫感を自覚し改善しなかったため,救急外来を受診した.緊急冠動脈造影検査では冠動脈の狭窄や閉塞は認めなかったため,後日冠攣縮誘発試験を行った.アセチルコリン5 μg 冠注により左前下行枝のステント両端に高度攣縮が誘発され,冠攣縮性狭心症と診断した.バイオリムスA9 溶出性ステント留置後より冠攣縮性狭心症が顕在化した1 例を経験したので報告する.