抄録
冠動脈瘻は多くは無症状で,冠動脈造影施行時に偶発的に認められることがある.今回われわれは,初回診断時には無症状であったがその後症状が出現し,多枝冠動脈バイパス術と冠動脈瘻閉鎖を施行した症例を報告する.75歳男性.心房細動に対するカテーテルアブレーション施行時に左回旋枝の冠動脈瘤と冠動脈瘻を認めていたが,無症状であるため経過観察をしていた.約6ヵ月後に労作時胸部不快感を自覚し,心筋シンチグラフィーで左回旋枝領域の誘発虚血を認め,冠動脈造影で3枝病変を合併していたため,3枝冠動脈バイパス術と冠動脈瘤結紮,冠動脈瘻閉鎖を施行し,症状は消失した.無症状の冠動脈瘻でも,高齢や冠動脈リスクファクターを有する場合,症状や心機能に変化を生じる可能性がある.適切な治療法,治療介入時期の判定には,冠動脈造影,MDCT以外に,心筋シンチグラフィーによる機能的評価が有用であった.