Zairyo-to-Kankyo
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論文
アルカリ性条件における炭素鋼の腐食に伴う硝酸イオンの化学的変遷挙動
本田 明加藤 卓建石 剛今北 毅増田 薫加藤 修西村 務
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2006 年 55 巻 10 号 p. 458-465

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抄録

放射性廃棄物を地下に処分したときの炭素鋼などの廃棄物含有金属と廃棄物に含有されるNO3-の化学的相互作用を評価するために, 閉鎖系で炭素鋼とNO3-を共存させ, NO3-の化学的変遷挙動及び水素ガス発生挙動を検討した. なお, 検討するpH範囲は, セメント系材料中を想定し, 10.0~13.5とした.
pHが12.5の条件での炭素鋼のカソード分極測定において, NO3-あるいはNO2-の共存する条件でのカソード反応は, Tafel型の電位依存性を示すことがわかった. NO2-濃度1.0mol/dm3の場合及びNO3-濃度1.0mol/dm3の場合とNO3-もNO2-も含まない場合の同一電位での電流密度を比較すると, それぞれおよそ2~3桁程度及び1~2桁程度大きいにもかかわらず, 炭素鋼の腐食速度は, 硝酸塩の濃度の影響は受けないかむしろ低下するという結果を得た. これは, 腐食反応系がアノード支配型であることを示唆している. 炭素鋼の腐食に伴うNO3-の還元過程は, NO3-→NO2-→NH3なる逐次反応と考えられる. また, アノード支配型の腐食反応におけるカソード過程として, NO3-の還元反応は, 水の還元反応と競合すると考えられる. NO3-濃度が高い場合 (e.g. 1.0mol/dm3) には, NO3-の共存しない場合と比較して, 腐食に伴う水素発生速度が1/100から1/500と非常に小さくなった. NH3の生成速度は, NO3-濃度が1.0×10-3~1.0mol/dm3の範囲でほとんど影響はなかった.

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© 2006 公益社団法人 腐食防食学会
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