銅オーバーパックの酸化性雰囲気における腐食挙動に及ぼす環境因子の影響を明らかにすることを目的として,炭酸塩水溶液を用いて動電位法および定電位法によるアノード分極試験を80℃にて行った.その結果,高炭酸塩濃度,低塩化物イオン濃度,高pH条件ほど不動態化が促進され,皮膜破壊は抑制された.また,硫酸イオンは皮膜破壊を促進する傾向があった.ケイ砂混合ベントナイト中では水溶液中に比べて溶液組成の違いによるアノード分極曲線への影響は小さいことがわかった.また,より温度の低い条件で得られた既往のデータと比較すると,温度が高いほど不動態しやすくなる傾向は認められるものの,皮膜破壊電位Ebへの温度による影響は認められなかった.皮膜破壊電位Ebを皮膜破壊型のイオンと皮膜破壊抑制型のイオンの濃度比,[Cl-]/[HCO3-],[SO42-]/[HCO3-]に対して整理すると,この濃度比が高いほどEbは卑化した.また,濃度比がある値以上では活性溶解の領域となり,不動態領域におけるEbの下限値は約-200 mV vs. SCEと求められた.定電位試験の結果,Eb以上の電位や,アノード分極曲線における第2のピーク電流が現れる電位以上の条件で孔食または不均一な腐食が観察された.