抄録
応力腐食き裂の発生過程は,初過程としての非進展性微小き裂の生成過程と第二段階としての当該微小き裂の合体過程から構成される.微小き裂合体過程の進行の結果として,ある臨界サイズを超えるき裂が形成された段階で,第3段階としての,自己進展性き裂が成立する.本稿は,進展性き裂発生時間の分布を指数分布モデルに近似して検討するとともに,初過程と第二段階の2つのランダム過程のポアソン確率過程への近似を検討する.2つのポアソン確率過程が連鎖的に結合していることに立脚したポアソンランダム過程モデルが検討され,統計解析結果はモンテカルロ・シミュレーション結果と良く一致した.き裂発生速度あるいは寿命分布下界値と負荷応力との関係の解析から,本確率過程モデルと実験データとがよく一致することが示された.