材料と環境
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論文
13Crマルテンサイト系ステンレス鋼における未固溶炭化物の耐すきま腐食性への影響
中津 美智代野村 光司中田 潮雄辻川 茂男
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2011 年 60 巻 10 号 p. 449-456

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抄録
通常品のヘルドCは2年程度使用されるが,新品のヘルドXが1,2カ月間の早期に局部腐食を発生したことを以前報告した.本研究では,ヘルドCと同じ化学組成の鋼C'に,ヘルドCの再現のために,冶金学的特性(硬さHv;未固溶炭化物量 [MC];旧γ粒径dγ)を考慮して熱処理を施した.ヘルドCの特性(484 Hv;1.2%;12 μm)は,1040℃-180 s水冷の溶体化処理後,450℃-20 s 空冷の焼戻しにおいて再現された.ヘルドCよりも低い硬さで未固溶炭化物の多いヘルドXの特性(474 Hv;2.0%;12 μm)は,1040℃-100 s付近の溶体化処理によって再現され,ヘルドCよりも短い時間と推測された.上記の熱処理条件は,6.8 vol% HNO3溶液中の鋼C'の侵食がヘルドCおよびXの表面形状に類似することから確認された.同溶液中のそれらの腐食速度と固溶Cr量[Cr]との関係は,関連する溶体化処理鋼の腐食速度とその[Cr]との関係に一致する.0.85,2.8または 28 mM NaCl水溶液中のすきま腐食再不動態化電位ER.CREVは,11.5~12.8%の[Cr]範囲において一定であり,それ以上では,13.4%[Cr]まで[Cr]の増加にともない貴化する.よって,11.5%(ヘルドX)および12.5%(ヘルドC)[Cr]におけるER.CREVは同じである.前報のとおり,実機で発生したヘルドXのすきま腐食は,残留塩素の増加により定常自然電位ESPER.CREVを超えたことに帰する.
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© 2011 公益社団法人 腐食防食学会
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