材料と環境
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論文
塩化ナトリウム水溶液における焼付け型亜鉛フレーク処理皮膜の長期防食性能
徳武 皓也伊藤 大輔横山 隆岡崎 慎司大谷 貴彦河内 光洋中里 道明東山 隆男
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2011 年 60 巻 2 号 p. 75-80

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抄録
ダクロタイズド®処理皮膜は自動車用小物部品における防錆皮膜として汎用的に用いられている.本紙では,2種類のダクロタイズド®処理皮膜に対して90日間にわたる3 wt%NaClへの浸漬試験を行い,その防食性能を様々な電気化学測定を用いることで,定量的に評価した.試験片として,軟鉄に亜鉛-アルミニウムフレークをクロムバインダーで固定化した皮膜を塗装したものを用いた.この皮膜のカソード防食保持期間はおよそ30日程度であることが腐食電位モニタリングから明確となった.また,インピーダンス測定において,浸漬75日における低周波数の位相θに大幅な変化が見られた.この変化と同時に赤さびの発生が観察された.一方,3%ホウ素化合物を含んだ皮膜では,亜鉛による犠牲アノード作用が,90日間保持されていた.インピーダンス測定における絶対値|Z|は,ホウ素添加されていないものと比較して,約2倍の値を示した.
分極曲線の経時変化追跡から,亜鉛の腐食生成物が皮膜中に堆積することで膜を安定化させることが明らかとなった.なお,浸漬14日程度で皮膜は安定化した.さらに,ホウ素化合物は亜鉛の過度の溶解を抑制するだけでなく,長期間の浸漬において皮膜のバリヤー特性をも改善させることも明らかとなった.
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© 2011 公益社団法人 腐食防食学会
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