抄録
オーバーパック容器材料としての炭素鋼の地層処分模擬環境中での電気化学的性質と腐食特性について,最近の報告を通覧した.地層処分模擬環境としては,脱気アルカリ性Na2SO4-NaHCO3-NaCl系溶液やこの溶液を含浸した圧縮ベントナイトが用いられている.電気化学測定によれば,炭素鋼の初期の腐食は活性化支配である.腐食速度に及ぼす溶液成分,合金元素,鋼組織の影響が調べられている.腐食速度は時間と共に低下する.これは鋼表面にFeCO3(siderite)皮膜が形成されるためである.浸漬腐食試験によると,腐食形態は全面腐食である.長期間にわたる年間平均腐食速度が評価されている.孔食,隙間腐食,水素脆性,応力腐食割れなどの局部腐食については,想定処分条件下で起こりうる可能性を示す明確な証拠は得られていない.