抄録
SUS316Lステンレス鋼の孔食電位を測定するために定電位法が用いられ,JIS G 0577で基準化されている動電位分極法と比較された.試験条件は試験温度300および323 K,110 ppm以下の金属イオンを含む0.008〜1 M塩化ナトリウム水溶液である.塩化物イオンおよび温度の上昇によってSUS316L鋼の孔食電位は低下した.孔食電位の試験結果は定電位法と動電位分極法の間で一致した0.08 M塩化ナトリウム水溶液中の金属イオンの存在はSUS316L鋼の孔食電位に大きな影響を与えた.孔食は定電流法により鋼表面から成長させられ,孔食断面で観察された.結果として,低い電流密度,あるいは塩化ナトリウム水溶液に添加されたMn2+,Cr3+が孔食の断面の縦横比を変え,より深い孔食成長を促進させることが分かった.孔食発生および成長機構がこの研究で議論された.