材料と環境
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論文
アンモニア緩衝液を電解液に用いるボルタンメトリーによるスズ酸化皮膜の化学状態分析
中山 茂吉杉原 崇康能登谷 武紀大堺 利行
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2013 年 62 巻 1 号 p. 16-21

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抄録
スズ酸化物を状態別に定量する新しいボルタンメトリー法を開発した.この方法では支持電解質溶液としてアンモニア緩衝液(0.5 M NH4OH+0.5 M NH4Cl) を用いることが特徴であり,電流-電位曲線の高電位側からSnO,水和したSnO2 (SnO2nH2O) の順で0.3 V程度分離した還元ピークが得られる.電解液中のNH4イオンにはSnO2nH2Oの還元反応を容易に進行させる能力があった.一方,従来法でよく用いられるホウ酸緩衝液や十分なイオン濃度の1 M KClなどを電解液にすると,SnOの還元ピークは現れるものの,SnO2nH2Oの方は水素発生の影響を受けて不明瞭となった.開発法の活用によって,大気腐食を想定して加熱したスズ板表面には,当該の2種類の酸化皮膜が生成することが分かった.併せて100℃を超える温度ではSnOが,また100℃以下の高湿条件ではSnO2nH2Oが主生成物であること,および温度や湿度の上昇によって生成量が増加することを確認した.さらには,還元ピークの電気量から算出した酸化膜厚が,FIB/SEMによる断面観察の結果から読み取った値とほぼ一致することを明らかにした.
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© 2013 公益社団法人 腐食防食学会
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