著者らは,既往の研究でAl-Zn多孔質焼結板と繊維シートを用いた無腐食鋼部材に対する大気犠牲陽極防食技術を提案した.本研究では提案する防食技術を腐食した鋼部材に適用する場合を対象として,腐食生成物に及ぼす影響と防食効果を検討することを目的とした.そのために,腐食鋼板に本技術を適用したモデル試験体の室内試験と大気暴露試験を実施した.
室内試験では犠牲陽極材から放出された電子による腐食生成物の還元反応を確認した.また,この反応で生じたFe3O4をカソードとする鋼素地で新たな腐食反応が繰り返されることにより,腐食生成物層が剥離し,最終的には鋼素地の表面が露出することを確認した.さらに,大気暴露試験では多孔質焼結板の組成や腐食鋼部材の素地調整の程度が腐食生成物と本技術の防食効果に及ぼす影響を明らかにした.