抄録
テラヘルツ(THz)波は光と電波の両方の特性を併せ持つ電磁波であるため,不透明な塗膜を透過した金属表面からの反射光が検出可能である.本研究では,THz波による,目視できない塗膜下金属表面の非破壊腐食検査へ向けたイメージング測定技術の確立に取り組んだ.
表面にスクラッチ痕を形成し,5%塩化ナトリウム水溶液噴霧によって腐食させた溶融亜鉛めっき鋼板を試験片として用いた.THz周波数固定イメージング測定には,GaP結晶を用いた差周波混合による周波数可変単色THz光源を用いた.2.0 THzおよび2.8 THz吸光度の大きな領域がスクラッチ痕周辺に観測された.蛍光X線(XRF)マッピング像と比較すると塗膜下金属表面に形成された腐食成分は塩化亜鉛あるいは塩基性塩化亜鉛に推定された.
溶融亜鉛めっき鋼板に対するTHz分光イメージング測定およびµXRFマッピング測定より,THz波が塗膜下金属表面の非破壊腐食状態検査を行う手法として有用であることを示した.