抄録
本研究の目的は有機酸種の違いが銅管の腐食形態に及ぼす影響を調査することである.腐食媒体として3種類の有機カルボン酸であるギ酸,酢酸,プロピオン酸を用いて銅管の浸漬および暴露試験を行った.ギ酸,酢酸溶液中に浸漬した場合に,ランダムに枝分かれした微細孔が発生した.1000 ppmプロピオン酸に浸漬した銅管には層状の腐食が発生した.ギ酸雰囲気中に暴露した銅管には蟻の巣状腐食が,酢酸雰囲気に暴露した銅管には半球状食孔が,プロピオン酸雰囲気に暴露した銅管には層状の腐食が発生した.SEM観察およびEPMA分析の結果より,酢酸雰囲気中で発生した半球状の食孔は,食孔内部にスポンジ状の金属銅とそのすき間に亜酸化銅が存在する構造を有することが明らかとなった.