銅を水中に浸漬すると浸漬初期に表面の一部が金属光沢から茶褐色に変色する.この浸漬初期に形成される皮膜を「初期皮膜」と呼び,この初期皮膜形成に及ぼす水中のシリカおよび塩化物イオンの影響を調べた.初期皮膜がその後の浸漬によってその面積を拡大するかは水質に依存する.水中の塩化物イオン濃度が高いと初期皮膜の面積は増大し,水中のシリカ濃度が高いと初期皮膜形成を抑制する.初期皮膜を有する銅管のカソード還元の結果,水中の塩化物イオンにより初期皮膜形成は促進されることが分かった.FT-IR分析により,シリカと塩化物イオンを含む溶液中に浸漬した銅上に形成される初期皮膜は亜酸化銅とシロキサン結合を有するケイ酸塩からなることが分かった.