2016 年 65 巻 8 号 p. 319-320
人類の経済活動の活発化により大気中に放出されるCO2量の増大が,産業革命以降の地球温暖化の原因と考えられている.2015年末に開催されたCOP21では,従来の国際的コンセンサスである気温上昇を2.0℃未満に抑えるとともに,1.5℃未満に収まるよう努力することを加え,各国の積極的な取組を喚起している.そして,その実現のためにCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)技術の活用が想定されている.CCSは①原料ガスからのCO2分離・回収,②高圧CO2の輸送,③超臨界CO2の深部貯留層への圧入,④圧入されたCO2の安全貯留の確認の4プロセスから成る.しかし,CO2は酸性ガスであり,水の存在とCO2の不純物,温度・圧力などの変化により,装置材料に予期せぬ腐食損傷がもたらされる危険が存在する.本報では,CCSの4プロセスと鋼材の腐食問題について概説する.