Zairyo-to-Kankyo
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解説
複雑な実環境をシミュレートしたデータ取得にもとづく腐食要因の解明
-海洋環境と原子力施設を例として-
山本 正弘
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2017 年 66 巻 1 号 p. 3-12

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抄録

腐食現象の発生メカニズムを明らかにするために,実験室的に実環境での腐食を再現するシミュレーション試験法を検討してきた.本稿では,海洋環境と原子力施設を例にこの手法に関して紹介する.

海洋での腐食については,干満帯直下で見られる腐食極大に着目して実環境を再現する試験を実施した結果,この領域では干潮時には,干満帯部をカソードとして腐食が進行し,満潮時には海中部深くをカソードとして腐食が進行し,長期間アノードが固定する現象が観察された.これは,アノード溶解が継続することで環境が変化して腐食し続ける,いわゆる『とけぐせ』と呼ばれる腐食現象と考えられる.

原子力施設については,高い放射線環境での腐食解析や電気化学測定が可能な装置を駆使してきた結果を示した.核燃料再処理施設でのNpの混入による腐食加速現象が,Np6+がステンレス鋼表面で還元され腐食が進行し,還元された Np5+がバルク溶液中で再酸化されるため,微量のNp混入でも腐食が加速されるメカに済に関して紹介した.また,軽水炉内での放射線環境で生成する過酸化水素の影響について評価する手法に関しても紹介した.

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© 2017 公益社団法人 腐食防食学会
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