金属材料は,その優れた破壊靱性と耐久性からインプラントのような医療デバイスとして広く使用され,インプラントの約80%が金属製である.金属材料は,整形外科,歯科に加えて循環器科での治療にも使用されている.隙間腐食と孔食が体内に埋植されたステンレス鋼で観察されることがあるが,TiやCo-Cr合金での腐食事例はほとんどない.一方でTi元素は埋植した周辺の組織から検出される.本稿ではこのTiの溶出機構について議論している.金属材料の耐食性は,生体適合性や生体機能性を示すためには根源的性質であり,表面酸化物皮膜と皮膜上の表面水酸基は生物学的性質を決定するために重要な役割を果たしている.加えて,Ti表面でのリン酸カルシウム形成はその良好な生体適合性発現の鍵となる現象である.金属材料に生体適合性や生体機能性を付与するための表面処理技術,特にカソード分極,マイクロアーク酸化,生体機能分子電着といった電気化学的処理についても本稿で解説している.さらに,耐食性評価の重要性について述べている.