無機Zn塗布鋼板は,Zn粒子により高耐食性を発揮することができる.しかしながら,無機Zn塗布鋼板の腐食メカニズムには不明な点が多い.数値解析モデルは,初期段階の腐食メカニズムの解明に有効である.我々は,イオンの輸送や化学反応を考慮した腐食現象の数値解析モデルの開発を行ってきた.計算結果から,Zn粒子が優先的に腐食し,MgCO3やCaCO3という腐食生成物が塗膜表層近くのZn粒子の周辺に生成した.これらの腐食生成物の分布はEPMAによる曝露試験材の分析結果と一致したが,Zn系腐食生成物の分布は一致しなかった.電気化学測定の結果,曝露試験後の試験片のカソード電流密度が,曝露前の値と比べると1/8に低下していることが明らかとなった.Znのカソード電流密度を1/8とした条件で再計算を行った結果,Zn腐食生成物はEPMA分析結果と一致した.これは,Zn粒子周りの腐食生物がZn粒子への酸素の到達を阻害し,Znのカソード電流密度が低下していることを示唆する.