2020 年 69 巻 8 号 p. 221-230
市販の溶液フローセルと誘導結合プラズマ質量分析計を直接接続し,白金(Pt)およびパラジウム(Pd)の溶解速度を時間分解測定可能な測定系を構築した.本測定系は,セルのチャネルを薄層化することで検出限界の向上に成功し,PtおよびPdでそれぞれ最小0.13 pg cm-2 s-1,0.39 pg cm-2 s-1の溶解速度が測定可能である.この系を使用し,固体高分子形燃料電池(PEFC)の起動/停止を模擬した電位サイクル下において,先行研究で報告されているより卑な電位から,PtおよびPdが溶解していることを明らかにした.また,従来は困難であった,PEFCの開回路電位(約1.0 V)より卑な電位におけるPtおよびPd溶解速度の時間分解測定に成功し,PtとPdの溶解機構が異なることを明らかにした.