2021 年 70 巻 8 号 p. 250-256
水溶液のpHとCl-濃度を同時計測するための化学イメージングプレートを作製し,プレートをすき間形成材として,窒素添加ステンレス鋼(Fe-18Cr-10Ni-5.4Mn-0.25N)のすき間内部の液性変化を可視化した.窒素添加ステンレス鋼のすき間腐食の発生初期の形態はピットであった.ピット周辺部にはpHの大きな低下と,Cl-イオンの濃縮がもたらされた.低pHかつ高Cl-濃度の領域の拡大にともない,すき間腐食が成長した.窒素添加ステンレス鋼のすき間腐食発生機構は,先行研究において報告されている窒素無添加ステンレス鋼(Fe-18Cr-10Ni-5.4Mn)の場合と同様であった.局所的に再不働態化した領域においては,pHの上昇と,Cl-濃度の低下が観察された.