亜鉛は標準電極電位が鉄(鋼)より323 mV卑であるにもかかわらず,pH中性-弱アルカリ性領域では表面に形成される酸化物皮膜のため鋼より高い耐食性を示す.その腐食特性によって亜鉛めっき鋼として世界中で使用されている.しかし使用開始後に亜鉛めっき鋼表面の電位が貴化することで鋼との電位逆転を生じる場合がある.その場合,局部腐食等によって生じた亜鉛めっき欠陥部では,カソード/アノードの面積比効果の影響も相俟って鋼の腐食が加速され,漏水事故につながることがある.実際に冷温水配管やスプリンクラ配管等で鋼/亜鉛めっき表面の電位逆転によるとみられる局部腐食が発生し,試料配管の電位測定により電位の逆転が確認されている.本報告では鋼/亜鉛めっき表面の電位逆転による建築設備配管の腐食事例を紹介し,その腐食機構と対策について述べる.