抄録
渋川市化学工場群周辺の大気中における金属腐食について, X線分析を主体とした腐食生成物層の成分分析により, 金属腐食と環境因子との関係を明らかにするために, 前報同様金属が特にさびやすいといわれている渋川市大崎, 中村および対照区として前橋市鳥羽町, 北群馬郡榛東村で昭和46年9月から1ヵ年間大気暴露試験を行ない次の結果をえた。なお, 試験片としては, 冷間圧延鋼板1種 (SPCC), 亜鉛板第2種および銀板 (銀地金2種) を用いた。
(1) 鋼板の重量変化では,前報同様中村の腐食傾向が最も著しく侵食度は12ヵ月で0.057mm/yrであった。大崎と鳥羽は, ほぼ同程度でこれにつぎ, 榛東の腐食傾向は最も小さく侵食度は0.042mm/yrであった。
(2) X線分析 (螢光X線分析およびX線回折) により中村では, 各試験片から塩素 (Cl) が最も多く検出され, 塩化銀 (AgCl) の検出量も大きく, 鋼板, 亜鉛板からイオウ (S) が最も多く検出されたことから, 中村での金属腐食は, 塩化水素ガス (HCl) と硫化物による影響が大きかったと推定される。銀板における塩素量の推定値は, 6ヵ月の中村, 大崎, 鳥羽, 榛東でそれぞれ3.7, 2.5, 2.5, 1.0mg/dm2, 最高値は中村の3ヵ月で4.5mg/dm2であった。