2005 年 54 巻 12 号 p. 582-586
使用済燃料の中間貯蔵の一種であるコンクリートキャスク貯蔵では, ステンレス鋼製のキャニスタに海塩粒子が付着することによるSCCが懸念されている. 本研究では, キャニスタ候補材の大気中塩化物SCC特性を把握するため, SCCの前駆現象である初期腐食挙動の評価, および長期SCC試験を実施した. 初期腐食挙動の評価では付着した海塩の吸湿から初期腐食の発生までを対象として種々の試験を実施した. この結果, 5g/m2 as Clの付着塩分量において発銹が生じる相対湿度は, 海塩が吸湿して導電性を示すようになる湿度よりも低いことがわかった. また, 353K, 相対湿度35%, 付着塩分量10g/m2 as Cl, 引張強さ近傍の応力において短時間のSCC試験を実施したところ, 12hでき裂状腐食が発生した. 一方で30,000h以上の長期SCC試験においてもキャニスタ候補材は破断せず, き裂状腐食からSCCへの変化過程あるいはき裂進展速度が遅いことによって候補材が高い耐SCC性を有していることが示唆された.