2010 年 55 巻 p. 9-12
滋賀県内の群落から採取した12系統のヨシ(Phragmites australis(Cav.)Tein.ex Steud.)を温室内で育て,栄養繁殖させた小植物体の成長特性を調査した.親株のシュートを切断して節からシュートおよび根を発生させたところ,それらの発生率についてそれぞれ約3倍と約4倍の系統間差異があった.また,シュートと根が発生するまでの日数にもそれぞれ3.9〜10.3日および12.9〜21.0日の系統間差異が認められた.これらの系統のうち,栽培と増殖が容易と考えられた4系統について形態的,生理的特性の調査を行った.供試した4系統間にはシュートと根の生体重比に明らかな系統間差異があるだけでなく,硝酸イオン吸収速度とリン酸イオン吸収速度にもそれぞれ約6〜8倍および約2倍の差異が認められた.以上の結果はヨシの群落内,群落間にかなりの形態的・生理的差異が存在することを示している.