作物研究
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総説
  • 猪谷 富雄, 妹尾 拓司, 山本 涼平, 小川 正巳
    2025 年70 巻 p. 1-10
    発行日: 2025/06/28
    公開日: 2025/08/22
    ジャーナル オープンアクセス
    田んぼアートとは,葉や穂の色が異なるイネ品種を巧みに用いて水田に巨大な絵や文字を描くものである.水田を有効利用して観光資源を生み出し,地域活性化につなげることができる.田んぼアートは,日本各地に拡がり,今では海外からも大きな関心をよんでいる.使用されるイネ品種は,観賞用あるいは景観用品種と総称されるが,葉あるいは穂の色が普通のイネとは異なり紫色,赤色,黄色,あるいは白色系を呈し,古い時代からその存在が知られ,大学や農業研究機関に保存されてきたものである.最近ではそれらの在来品種や突然変異系統をもとに新品種も育成されている.本報告では,一世紀前の和歌山県立農事試験場の変わり種ともいうべき特別な在来稲に関する報告を整理,観賞用イネ品種の分類と主要品種,全国の田んぼアートの実例や作成法などに関する現状と課題をまとめた.
論文
  • 杉本 充, 羽根 沙苗, 栂森 勇輝
    2025 年70 巻 p. 11-19
    発行日: 2025/06/28
    公開日: 2025/08/22
    ジャーナル オープンアクセス
    エダマメの収穫において,圃場中でダイレクトの脱莢までできる収穫脱莢機を用いる場合,作業の省力化は大きいが地際近くで収穫ロスが生じる.そこで,京都府育成の丹波黒ダイズ系エダマメについて,育苗日数を延長することによって下位節間が伸長した苗を移植して,収穫機械に対する適応性を調査した.その結果,下位節間伸長苗を用いると,収穫脱莢機でも作業後の株内取残し莢や圃場への落下莢が減少する事象が多くみられ,収穫ロスの低減につながることが示唆された.しかし,収穫ロスの発生程度に品種間差や年次変動もみられた.そのため,さらに調査を積み重ね,機械収穫の適応性が向上する苗の解明を進めることが必要である.
  • 山本 涼平, 佐野 智弘, 中野 幸恵, 長尾 則男, 妹尾 拓司, 森永 力, 猪谷 富雄
    2025 年70 巻 p. 21-29
    発行日: 2025/06/28
    公開日: 2025/08/22
    ジャーナル オープンアクセス
    大腸菌および枯草菌に対する玄米エタノール抽出物の抗菌活性を,黒米,赤米,白米(普通米)の各品種で評価した.寒天拡散法において,黒米および赤米の玄米エタノール抽出物は,両菌種に対して明らかに用量依存的にブロッキングサークルを形成したが,白米のエタノール抽出物は形成しなかった.また,寒天平板希釈法における最小発育阻止濃度から,黒米と赤米のエタノール抽出物は両菌種に対して抗菌活性を示した.この方法では,全体的に枯草菌よりも大腸菌に対してやや強い活性を示した.アントシアニン含量が高い朝紫(黒米)は,より強い抗菌活性を示した.黒米と赤米の糠層からの抽出物は,OD(660nm)を測定する比濁法で強い抗菌活性を示した.一方,同じ品種の精米抽出物はかなり弱い活性を示したことから,黒米や赤米の糠層には有効な物質が多く存在する可能性が示唆された.このことから,黒米・赤米の抽出物を抗菌剤として食品加工に利用できる可能性が示唆された.
  • 鞍 雄介, 足立 優貴, 藤井 弘章, 堀端 章
    2025 年70 巻 p. 31-38
    発行日: 2025/06/28
    公開日: 2025/08/22
    ジャーナル オープンアクセス
    高野山麓に位置する和歌山県紀美野町の2 群の地区から採取したカヤ(Torreya nucifera (L.) Siebold et Zucc.)集団,特にその一品種ヒダリマキガヤ(T. nucifera f. macrosperma( Miyoshi) Kusaka)について,RAPD-PCRを用いたクラスター分析を行った.その結果,地理的要因(地区)によって大きくクレードが分枝した後に,それぞれのクレード内に品種のサブクレードが形成された.この結果は,地理的分化が確立された後に外部からヒダリマキガヤが種子で導入されて各地域の遺伝子プール内に浸透したことを示唆している.その導入時期は両地区で一致し,一定の時期に積極的な導入が行われた可能性が示唆された.一方,推定樹齢400 年のヒダリマキガヤの古木では,株元から生じたひこばえと主幹部の枝との間に遺伝的差異が観察されたため,この樹が接ぎ木によって作成されたことが明らかになった.
  • 竹生 敏幸, 谷坂 隆俊
    2025 年70 巻 p. 39-46
    発行日: 2025/06/28
    公開日: 2025/08/22
    ジャーナル オープンアクセス
    ヘドロが水面近くまで堆積し,その一部が木耳状の黒塊や泡沫になって浮遊する,悪臭漂うラグーン(面積3,100㎡,貯水量4,000㎥)を用いて,土壌微生物叢活性剤Takeo-Tanisaka 液(TT 液)の投入が溜池等農業用水供給湖沼の水質改善に有効か否かを検討した.実験開始の2010 年には,5 月10 日から12 日にかけてTT 液を32,000 ml 投入した後,5 月26 日に12,000 ml,6 月9 日に4,000 ml 投入した.2010 年の総投入量48,000 ml は貯水量に対して12 ppm であった.さらに,翌年5 月9 日に前年の半分量にあたる24,000 ml を投入した. 2010 年6 月には池のヘドロの分解が進んで透視度が向上し,水質が目に見えてきれいになり,翌年5 月にはヘドロがなくなって池の底がみえるようになった.水質を表す浮遊物質量(SS),生物化学的酸素要求量(BOD),化学的酸素要求量(COD),溶解性化学的酸素要求量(D-COD),全りんおよび全窒素の値は,2010 年6 月9 日の処理後1 カ月で急速に低くなり,その後は,上下変動を繰り返しながらもさらに下る傾向が認められた.さらに2011 年と2012年の値は,2010 年の同時期の値より顕著に低くなり,透視度は向上した.これらのことから,TT 液は,汚れた溜池等,湖沼の微生物叢を多様化,活性化し,水質を改善する有効な資材であると結論した.
  • 大竹 優樹, 安達 昴亮, 奥本 裕, 牛島 智一
    2025 年70 巻 p. 47-53
    発行日: 2025/06/28
    公開日: 2025/08/22
    ジャーナル 認証あり
    イネにおける穂ばらみ期障害型冷害は大幅な減収に繋がることがある重大な気象災害であり,寒冷地で栽培される品種への障害型冷害耐性付与は育種上極めて重要な課題である.本研究ではイネの障害型冷害における冷温感受期に根系への冷温処理によって種子稔性が低下する原因を調べるため,養分遮断処理が種子稔性に及ぼす効果を調査した.耐冷性が異なるイネ品種・系統の冷温感受期である穂ばらみ期前期(E 期)にイオウ(S),カルシウム(Ca)および鉄(Fe)の遮断処理を行った.この結果,耐冷性弱の北海241 号および耐冷性極強のはやゆきの種子稔性は大きく低下した.また,はやゆきの種子稔性の低下は北海241 号に比べて小さくなった(実験1).したがって,E期は養分欠乏に対する感受性が高い生育相であること,および耐冷性品種は冷温耐性だけでなく養分欠乏に対しても耐性を示すことが明らかとなった.耐冷性極強の4 品種から採種した溢泌液中のS,Ca およびFe の濃度は世界のイネ・コアコレクション69 品種の溢泌液中の3 成分の濃度分布の中では低い方に偏った(実験2).これらの結果から,E期の根への冷温処理による種子稔性低下は根からの無機養分供給の低下による養分欠乏が主な要因であり,耐冷性品種の中には養分欠乏耐性をもつ品種が多い可能性があると考えられた.
  • 山本 晴志郎, 小梶 裕之, 岩橋 優, 西村 和沙, 元木 航, 長坂 京香, 中野 龍平, 井上 博茂, 中﨑 鉄也
    2025 年70 巻 p. 55-63
    発行日: 2025/06/28
    公開日: 2025/08/22
    ジャーナル オープンアクセス
    イネ品種「銀坊主」を背景として感光性遺伝子座Ghd7 座とHd1 座の機能型・機能欠失型の組み合わせが異なることで感光性の強弱が異なる4 系統を供試して,播種期処理2 水準(Ⅰ:普通期播種区(5 月9 日播種)およびⅡ:晩期播種区(6 月20 日播種)),育苗期間2 水準(S:標準育苗区(21 日)およびL:長期育苗区(28 日))の計4 処理条件下で移植栽培を行い,到穂日数,収量,収量構成要素および高位分げつの発生状況について調査した.到穂日数においては,標準育苗区,長期育苗区ともに,晩期播種区において,感光性が強い系統ほど到穂日数が大きくなったが,系統間の到穂日数の差は10 ~ 11 日程度と小さく,最も出穂の遅れた強感光性系統においても出穂日は9 月2 日と推定される出穂晩限日である9 月7 日より早く出穂したことから,感光性の強い系統でも西南暖地地域の6 月下旬播種といった晩期移植栽培において,十分に利用可能であることが示された.収量においては,標準育苗区,長期育苗区ともに,晩期播種区において,Hd1 座の機能型アレルを持つ感光性の強い系統で収量が大きな傾向が見られた.この要因は,Hd1 座の機能型アレルを持つ強感光性系統の登熟歩合が高かったためであると考えられた.一方,Ghd7 座の機能型アレルは収量に影響を及ぼさなかった.また,標準育苗区と比べ,長期育苗区において収量が減少する傾向が見られた.高位分げつの発生は,長期育苗区で多い傾向が認められ,感光性の発現が高位分げつの発生を抑制することが示唆された.これらのことから,西南暖地地域での畑作中心の作型における水稲晩期栽培にはHd1座に機能型アレルを持つ感光性の強い系統が適していると考えられた.
  • 井上 博茂, 寺石 政義, 築山 拓司, 齊藤 大樹, 奥本 裕, 谷坂 隆俊
    2025 年70 巻 p. 65-72
    発行日: 2025/06/28
    公開日: 2025/08/22
    ジャーナル オープンアクセス
    台湾では,古来indica イネが栽培されていたが,1900 年頃から日本への輸出用japonica 米の大量生産が求められるようになり,多くの日本在来japonica 品種が導入され,試験栽培が行われた.しかし,それら品種は本来の収量ポテンシャルを発揮できず,低収量であった.本報では,その理由をまず解析し,低緯度に位置する台湾の稲作期の日長が日本におけるより短く,中緯度の日長に適応した日本品種は,感光相が大幅に短縮されて栄養器官の生長が不十分なまま出穂開花したためと結論した.次に,日本在来japonica 品種間交雑(「亀治」×「神力」)によって台中農試で1927 年に育成された「台中65 号」が安定多収を示し,台湾の主力品種となって長年栽培され,現在まで交配母本として汎用され続けている理由を考究し,同品種は短日長の台湾においても長い栄養生長期間をもたらす“ 極長の基本栄養生長相(BVP)と弱感光性” を有するため安定多収になること,その極長BVP はBVP 増大遺伝子ef1 と不感光性遺伝子Se1-e の相乗効果によること,ef1 は「台中65 号」の育成過程でEf1 から自然突然変異によって誘発された遺伝子である可能性の高いことを示した.
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