作物研究
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論文
窒素・硫黄代謝制御による子実貯蔵タンパク質のサブユニット組成の変化 第一報
砂耕栽培と水耕栽培におけるイネの応答
田中 朋之 中嶋 祐道Nadar Khan山口 武視中野 淳一
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 56 巻 p. 17-22

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抄録
イネ子実において主要な貯蔵タンパク質であるグルテリンのサブユニット組成は,その栄養性に大きく影響する.これまでに,そのサブユニット組成は窒素・硫黄代謝により変化することを,含硫アミノ酸を多く含む外来タンパク質遺伝子による形質転換や穂培養といった特殊な実験系において明らかにしたが,インタクトな植物体による応答は不明であった.そこで,圃場栽培により近い砂耕栽培・水耕栽培での応答を解析したところ,インタクトな普通品種植物体においても高窒素施肥によりサブユニット組成が変化することが明らかとなった.砂耕栽培の高窒素施肥により,GluAサブユニットが減少し,制限アミノ酸であるリジンを多く含むGluBサブユニットが増加した.これにより,リジン含有率は7%増加すると予測された.硫黄制限処理の効果は不明であった.以上のことから,インタクトなイネ植物体においても,高窒素施肥によりグルテリンサブユニット組成を改変出来ること,そして栄養性を改善できることが明らかとなった.
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© 2011 近畿作物・育種研究会
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